子供の頃にピクサー作品は通らなかったので『トイ・ストーリー』は初めて見たけど、大人が見てもたいへん楽しめました。それまで当たり前に持っていた「アンディの一番のお気に入りのおもちゃ」と「おもちゃたちのリーダー」というポジションを高性能な新参者バズに奪われたウッディと、スペースレンジャーだと思い込んでいた自分が実はオモチャにすぎないのだと知ってしまったバズが、冒険を経てそれぞれが成長しつつ友情も育んでいく。つまりアイデンティティの喪失と再生の物語なんだけど、おもちゃなのにそれらの機微が不自然なく描かれていて、かつ娯楽作品としても良質でバランスがいいんよね。主人に捨てられたり飽きられたりすることへの恐れや愛情を奪われて抱く嫉妬など、おもちゃにしては生々しい感情を見せてくるから刺さるというか。ウッディがなかなかのクズだったのも面白かった。あと人間の目があるか否かでおもちゃたちが一斉に動き出したり止まったりする「動作の落差が生む空気の表現」も絶妙で、確かにそこには魅力的な世界観があった。ちなみに私は主役二人はもちろん、偵察もやってた軍曹がお気に入り。
人間キャラクターの中では魔王のようなシドの残忍さが際立っていたけど、おもちゃの主人は幼い子供が多くなるし、アンディも含めてやっぱり子供の残酷さを意識せずにはいられない。コミカルに描かれていたけど、誕生日やクリスマスなどのイベントが来るたびにああしてみんなが毎回ひやひやしているのかと思うと泣ける……。
