あらすじを読んだ時はタイムトラベルで娘を失った過去を改変するSFかと思ってたけど、実はパラレルワールドを舞台にしたサスペンスだったのが意外で、でも予想とは違った展開に繋げたりもしていて思った以上に楽しめました。あとマッツ・ミケルセンを堪能する映画としては一級品だと思う。ダヴィッドという主人公は結構なクズではあるけど、そうしたところも含めて色んな表情を堪能できるのがいい。
パラレルワールドへの道は絶望したり後悔したりしている人に開かれるらしいけど、やり直しをするには歪な世界なので、どうしてもどこかで綻びが出てしまう。それを取り繕うとしてダヴィッドが泥沼にはまっていく……のかと思いきや、ちょっと違った。街中の人が五年後の世界から来てパラレルワールドの自分を殺しているらしい。んなアホな、と思ったけどトンネルを通れる人が他にいても不思議ではないんよな確かに。あの街の人々は身勝手な人で溢れているということになるけど、その事実が少し寓話的で面白いとは思う。とはいえ愛人のジアやマヤまでがパラレルワールドにやってきたのはさすがに雑だし、隣人シギーの扱い方ももーちょいどうにかならなかったのかなとも……。
それでもラストのマヤの選択にはぐっと来た。もう一人の自分を殺さず、レオニーも奪えなかった。突っ込みどころの多い映画ではあるけど、マヤを失ったプールの前で失意と安堵を同時に抱く二人が手を繋ぐエンディングがすごく好みで、これを見たらなんか妙に満足してしまった。