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『きっと、うまくいく』感想

きっと、うまくいく(字幕版)

名作と言われる映画を鑑賞。インド映画らしくミュージカルパートもあり、三時間という長さがハードルになってたけど、見てみたら確かに評判通りいい映画だった。しかし倫理観的に気になるところも多く、それがノイズになっているのが惜しい。

とにかくランチョーたちの非常識な振る舞い(普通に犯罪と呼べるものも多い)をギャグにしてしまうのが気になる。死人が出ても反省の欠片も見られない学長は問題だし、ランチョーの言う教育問題の提起にも頷けるものがあるだけに、主人公たちの悪ノリを延々見せられると応援できなくなるのが残念だった。飛行機が離陸しようとしているのに注意されても携帯で話し続けたり、仮病を使って緊急着陸させたり、他の旅行客に成りすましてハイヤーに乗ったりする冒頭の時点できつかったし、ランチョーによって改竄された原稿をチャトゥルがスピーチするシーンも引いた。チャトゥルがヒンディー語を理解しようともしなかったことが仇になっているのは分かるけど、それにしたってやり過ぎでは……。「ゴーカン」という単語をカジュアルに弄んでいるところも好きになれない。チャトゥルは確かに嫌味な奴だけど、あそこまで馬鹿にされるほどでもなかったと思う。「消音銃」なんて呼ばれているのも可哀想というか、いじめにしか見えないのだけど……。ランチョーは優秀な風雲児なんだけど、強者の驕りも見え隠れしているので好きにはなれないなやっぱり。優秀でも運が悪ければ潰されることは少なくないと思うから(インドはどうか知らないけど日本ではそうだと思う)、「優秀なら成功はついてくる」という言葉にもあまり賛同できなかった。

それでも楽しめたところはたくさんあるし、基本的にはいい映画だったと思っています。三人の友情にはホロリと来たし、ランチョーの正体と居所が判明するまでの現代パートはミステリ的な面白さがあって見入った。出産のあれこれで有耶無耶にされた感は否めないものの、宇宙ペンのところも良かったな。あとなんといってもラストシーンのロケーションの美しさに溜息が出る。あんな綺麗な湖で終われるのが気持ちいいよねと。これで最初から最後まで素直に楽しめたらパーフェクトだったんだけども……。