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『ゴールデンスランバー』感想

ゴールデンスランバー<廉価版> [Blu-ray]

内容を調べずに見始めたので、安倍元首相の殺害など最近の色んな事件を思い出させるような作品だったことには驚いた。でもわりとすぐにとんでもない事件が発生するので、すんなりと青柳の逃亡劇の世界に入っていける。ただ、サスペンスというより人情ドラマとしての色が強かったのは意外でした。そんな話をリアリティを無視して堂々と描いており、故にテンポがいい。この作風は真っ赤なヘッドフォンをつけたままショットガンをぶっ放す刑事が登場した時に「この映画はそーゆーノリなのね」と分かるので、あんまり気にならないんよね。むしろ、強力な主人公補正によるフィクションを楽しむつもりで見た。なんで濱田岳が助けてくれるのかとか、なんでヤクザっぽい柄本明が助けてくれるのかとか、ターミネーターみたいな永島敏行はなんやねんとか、そういうことを深く考えなくていいのが気楽で楽しかった。音楽もいい。ビートルズはあまり知らないけど、これを機に聞いてみようかなという気になった。

青柳はいわゆる政府の陰謀の犠牲者で黒幕は海老沢の可能性が高いけど、この身勝手な黒幕のせいで青柳を始めとして、色んな人の人生がめちゃくちゃにされたのかと思うともうね……。青柳を追う佐々木は分かりやすく敵として描かれているけど、彼だって利用されてるだけなんだよな。青柳を撃ったと思ったら逃がしてしまった後に「本物ですか?」と念入りに聞かれて何かを察し、愕然とする表情が印象に残っています(この青柳と佐々木の対決から花火が大量に打ち上がり、青柳が逃げるところまでのクライマックスは見入る)。青柳はなんとか逃げられたけど、自分は死んだということにして整形までしないと普通の生活ができないんだから悲惨すぎやしないか。人を助けて時の人なってしまっただけなのにな。だからこそラストシーンにはちょっと救われたんだけど、それ以上に切ない……。しかし、英雄が転落するシナリオを人は求めるというようなことをキルオが言ってたけど、これは私にも当てはまるし説得力があるだけに、ちょっと悔しいというかなんというか。