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『GONIN』感想

GONIN

役者のビートたけしが好きなので(監督作は『座頭市』しか見たことないけどこちらも好きです)たけしが出てるなら見とこうかな、くらいの軽い気持ちで見たら予想以上に面白くて驚いた。ストーリー自体はありふれたものだしウェットで暗い内容だけど、キャラクターが濃密なのでエンタメとしても気楽に見れる。何より、演じる役者陣が素晴らしい。たけしを目当てに見たけど、全員見事に合ってたと思う。ざらついた画面、濡れたような夜の風景、雑然とした街並み、安っぽいネオンの色、とバブル崩壊後の独特の空気を漂わせる映像もいい。あと夜のシーンが多いけど、画面が暗くて分かりにくいということがなかったのもポイントがめちゃくちゃ高い。

行き場を失った五人の男たちはみんな味があったけど、それぞれの関係性もいい。描写自体はそんなにあるわけじゃないけど、キャラクターも役者も濃いのであんま気にならんのよな。ナイフを手に詰め寄る最初のやり取りやラストのキスシーンが印象的な万代と三屋、言葉は少ないけど不思議な信頼で繋がっている万代と氷頭(終盤、万代が殺された後の三屋と氷頭の関係もいいよね)、痛々しい顛末を迎えてしまうジミーとナミィ、腐乱死体のある部屋で暴力的なセックスに耽ったり(一方はフィジカル面、もう一方はメンタル面で相手に暴力を振るうところが濃い)雨の銃撃戦のシーンが強烈な京谷と一馬。荻原も竹中直人がやりすぎなくらい演じているのが見ていて惹きつけられるし、彼が自宅に帰るシーンだけホラーじみているのも面白い。彼はナミィのパスポートを盗んだりなど余計なことをしてしまうんだけど、最初から壊れていた人だったのだと分かった時はスッと納得してしまった。

でもやはり途中からの登場なのに、抜群の存在感を示す京谷が最高にいい。雨の中、ラフな格好でビニ傘を持ちながら無表情で氷頭を撃つシーンがすごく好き。一馬が殺された後は警察にバンバン撃つのもたまらんよな。白昼の高速バスでの三屋との一瞬の対決もいいし、その後の余韻も含めてものすごく印象に残った映画でした。