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『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』感想

雨の日は会えない、晴れた日は君を想う(字幕版)

タイトルの雰囲気から恋愛映画っぽい印象を受けるけど、毎日の生活の中の空虚なルーティンに溺れ、心が麻痺していった男の破壊と再生の物語だった。主人公の振る舞いは荒唐無稽で共感しづらいけど、「湧いて然るべき感情が湧いてこない自分に焦燥感を抱く」という経験なら私にもあるので、思ったよりはとっつきやすい作品だった。

デイヴィスによる破壊は、ありがちな破壊衝動から来ているものではないところが面白い。今まで何事にも無関心だった分、関心を持ったことで対象を理解しようとして分解に至り、これが傍迷惑な破壊に繋がっているのだと思います。最後にはジュリアへの愛は疎かにしていただけでちゃんとあったことに気づき(タイトルの意味が分かる車内のシーンがまたいいんよね)、ジュリアとの思い出が詰まったメリーゴーランドを破壊せず再起動させる終わりが心地良い。そんな娘婿に振り回されるクリス・クーパー演じるフィルも良かったな。

物理的に体でも繋がりそうで繋がらなかったカレンとの友情もいいんだけど、彼女との出会いはきっかけに過ぎず、むしろクリスとの時間がデイヴィスには大きかったように思います。これまでの抑圧から解放されたデイヴィスが、子供を相手に大人気なく本気で走るラストは爽快感があった。