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『パッチギ!』感想

パッチギ!

久しぶりの鑑賞。恋愛映画、青春映画、暴力映画、音楽映画はいずれもちょっと苦手だったりあまり興味のないジャンルだったりで普段は見ようとはなかなか思えないけど、恋愛と青春と暴力と音楽がバランス良く詰まった『パッチギ!』は珍しく好きな映画なんですよね。キャストの瑞々しさもいい。正直言って井筒監督本人にはいいイメージがなかったので、初めて見た時も「こんな映画を撮る人なのか」と驚いた記憶があります。

基本的には日本人と在日コリアンが付き合うまでを描くラブストーリーなんだけど、色んな要素を盛り込んでいるのにガチャガチャした印象がなく、分かりやすいのがいい。解決の難しい背景はあるけど、キャラクターはみんなシンプルでとっつきやすい。だからこそ重い溝に雁字搦めにされてしまうのだろうけど、そんなキャラクターがみんな魅力的でした。アンソン、バンホー、チェドキたちとの会話もくだらないししょーもない喧嘩ばっかやってるんだけど、そのくだらなさやしょーもなさが嫌じゃなかったな。

見どころはたくさんあって、鴨川を舞台にしたシーンはどれも印象に残る。中盤の告白シーンは「もし結婚するなんてことになったら、朝鮮人になれる?」というキョンジャの問いかけに対し、答えに窮するというより虚を衝かれたような康介の表情が良かったな。康介はそんなことは露ほども考えていなかったのだと、そのことがよく分かる。それがエピローグの康介の「キョンジャが言うなら、どこへでも」へと到達するのがいいよね。

何より、日本人だからという理由でチェドキの葬式から追い出されてしまい、康介がラジオ局で「イムジン河」を傷心の中でもめげずに歌い上げるクライマックスが熱い。アンソンやバンホーなりの「チェドキの葬式」でもある鴨川の乱闘を始め、大友康平の演じるディレクターの痛快な啖呵、ナース姿でドロップキックを披露してくれるガンジャ、桃子の出産と劇的な出来事が同時進行していく見せ方が単純なんだけどいい。ここは何度見ても泣きそうになる。ラストのキョンジャの「アホ!」も最高に可愛かった。