海兵隊のブートキャンプやベトナム戦争の風景を淡々と映し、道徳や尊厳が破壊された末に剥き出しになる残虐性を浮き彫りにしていく。見る前は反戦映画だろうと思ってたんだけど、カメラが向ける目はなんだか無機質で、そこはちょっと意外でした。
俯瞰するかのように撮るので分かりやすく盛り上がるドラマはあんまりないけど、それでも前半のブートキャンプはハートマン軍曹のバリエーション豊かな罵倒が強烈で、「おフェラ豚」とか「臆病マラ」とか「そびえ立つクソ」とかここまで次々と罵詈雑言が飛び出すと笑ってしまう。ランニング中の歌も、下品なのにリズミカルで覚えやすいメロディなのがあーかーん。
そしてハートマン同様に強烈なのが微笑みデブ（この邦訳もすごすぎんか）で、同期の足を引っ張るせいでリンチに遭い、ハートマン軍曹を殺して自殺してしまう。この時は彼だけがおかしくなってしまったように見えたけど、映画を最後まで見ると、むしろ彼だけが真っ当だったからこそ自殺してしまったようにも思えてくるな……。
後半は一転して戦場に放り込まれた新兵ジョーカーを追うのだけど、ヘリからマシンガンで民間人に乱射しながら女子供も殺したことを自慢する兵士に引いていたジョーカーが、最後にはベトコンの少女を自分の意志で殺すクライマックスは見入る。苦しむ少女への慈悲だったのか、ただ殺したいだけだったのかは分からなかったけど、どちらにせよ一度殺したことで彼は海兵隊の求める「殺し屋」になってしまった、ということなのかなこれは。炎上する市街で海兵隊が「ミッキーマウス・マーチ」を唱和するラストは、皮肉にしてはストレートで清々しいほど。しかし後半もこうした見どころはあるんだけど、ハートマンの罵詈雑言のインパクトで引っ張ってくれた前半の印象が強すぎるなやっぱり。
