キービジュアルの印象から遺伝子管理社会を舞台にしたスタイリッシュなSF映画かと思ってたんだけど、それは間違ってはいないものの、愚直に夢を追いかける主人公を映す青春映画でもあったのは予想外。殺人事件が起きたりしてサスペンス要素もあるにはあるけど、こちらは副次的なものでしかない。が、運命に抗えなかった者と抗おうとする者を描いた、切ない人間ドラマが意外にも良かった。
とにかく「適正者ジェローム」という人間を壮絶な覚悟で維持しようとするヴィンセントとジェロームの、共生関係かつ共犯関係が印象的。不適正者で夢を諦めていないヴィンセントと、適正者で夢を諦めたジェローム。アントンとの遠泳対決に勝って可能性を示したヴィンセントと、水泳で銀メダルしか取れなくて可能性を潰されたジェローム。自分の痕跡を一切消してしまおうとするかのように体を清める毎日を過ごすヴィンセントと、ヴィンセントが夢を叶えた日に自分を本当に消してしまったジェローム。最後まで対照的だった二人がいいんですよね。殺人事件を機に、ヴィンセントとジェロームの秘密が露見しそうなスリルも面白かった。最後は夢を勝ち取ったヴィンセントの旅立ちと夢を諦めたジェロームの旅立ちで終わるのが美しく、哀しいラストなのに不思議と暗い気持ちにはならない。優しい映画でした。イーサン・ホーク、ジュード・ロウ、ユマ・サーマンもそれぞれが合っててよかったなすごく。
