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『トップガン マーヴェリック』感想

前作から正統進化したような王道作品を、真摯に作り上げた続編でした。飛行アクションも迫力満点で、単純な飛行シーンでもコックピットでのパイロットの振る舞いからして前作とは情報量が違いすぎるし、何が起きてるのか分からなかったドッグファイトも分かりやすくなった。ストーリーもシンプルで、ミッションもシミュレーション付きで丁寧に説明してくれるのがありがたい。そして無人機の台頭によりパイロット不要論が囁かれる中でもパイロットであろうとするロートル兵の姿が、トム・クルーズの映画に対する姿勢そのものに重なってぐっと来るんよね。まさに「トムの、トムによる、ファンのための映画」だったと思います。

まずマッハ10を目指す冒頭が熱かったけど、この時の「ごちゃごちゃ言う上の人間には実演で見せつけりゃいい」というマーヴェリックらしい自信の表れが、教官から編隊長へと移行する後半のきっかけに繋がる流れでも発揮されていたのが良かったな。若い頃のマーヴェリックに比べるとさすがに歳も経た分だけ落ち着いてるけど、変わらないところもある。

一方ルースターは繊細で慎重派なのが面白いキャラクターで、だからこそマーヴェリックとの確執は避けられないのだけど、終盤でかつてグースと乗っていたF-14を敵から奪い、今度はグースの息子と乗る流れが熱かった。ここはめちゃくちゃな展開なのに、マーヴェリックならそういうこともやっちゃうよなという説得力がある。それはマーヴェリックの力でもあり、トムの力でもあったと思う。やっぱりトムって大スターなんだなとしみじみ感じて、こんなメタな感情を揺さぶられたところで泣けた。最後の最後で颯爽と助けにきてくれるハングマンの、彼らしい台詞もずるいんだよな……。彼も美味しいキャラクターでした。

戦友アイスマンとの再会も良かったし(その前のチャットの会話がまたいいんよね)、ビーチラグビーで盛り上がったり(謎だった前作のビーチバレーとは違い、今回は一応意味はあるのがなんか笑う)、雑でベタなラブシーンを入れたり(この雑さでベタなのがいいなと思ってしまった)など前作を意識した要素も多いけど懐古主義に陶酔してはいないし、ユーモアを取り入れているところ(ペニーの部屋から逃げようとしてアメリアに見られるところは劇場が笑いに包まれた)も好き。

振り返ってみると、およそ欠点の見つからない作品だったと思う。私はアベレージの高い作品よりも多少欠点があっても尖ったところのある作品の方が刺さりやすいし、今回も刺さりはしなかったけど、『トップガン マーヴェリック』の安定感はトムの魔法によるところも大きく、そこが最大の魅力になっているのがすんげえ良かった。こういう「映画の魔法」を浴びていられるのは最高だなとつくづく。