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ネタバレ映画感想とかいろいろ

『落下の王国』感想

知り合いに勧められた作品で、とにかく映像がいいとは聞いてたけど確かに衣装も含めて素晴らしかった。ロイがアレクサンドリアに語り聞かせる「叙事詩」は語り手の都合が大きく影響するし行き当たりばったりでいい加減だけどその緩さがいいし、そんな緩い世界観が大胆な色使いや計算し尽くされた構図によって再現されるのが最高。そしてその御伽噺とリンクする、現実の傷心のスタントマンと御伽噺の続きをせがむ少女の物語にも同じくらいにぐっと来るんですよね。まったく知らないタイトルだったけど見て良かった。

私がこの映画を気に入ったのは「青年と幼女」の健全な組み合わせに弱いせいもあるけど、ロイは御伽噺を餌に少女を利用して自殺しようとするんだからかなりのクソ野郎ではあります。いたいけな少女を騙してそんな残酷なことに巻き込むんじゃねえええ! アレクサンドリアが素直だから余計にロイの自分本位な面が際立つ。でもそんなクソ野郎が、少女によって救われる結末は好み。特に頭を怪我したアレクサンドリアと真意を告白したロイのやり取りは、二人の好演もあって素晴らしいクライマックスになったと思う。ロイにはムカムカするけど、結局彼の弱さを嫌いにはなれなかったな。