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ネタバレ映画感想とかいろいろ

『時計じかけのオレンジ』感想

露悪的要素を売りにした小難しい芸術映画だろうと想像してたら、意外にエンタメしてて面白かった。特に後半がいい。前半も暴力の連続でそこは退屈だけど、暴力シーンにクラシックを組み合わせる演出は謎にハマっててずるい。アレックスは普通にクソ野郎でしかないし、股間のプロテクターや字幕だとわざわざ下線つきで表示されるスラングなんかは痛いけど、それでも前半を乗り越えられたのは音楽によるところが大きい。ちょっとサントラが欲しくなった。中でも「第九」や「メアリー女王のための葬送」の使い方が好き。

キャラクターは身勝手な人間ばかりなのが印象に残っていて、アレックスを始めとしたドルーグの面々や序盤の被害者の作家(アレックスが「雨に唄えば」を熱唱したことで妻を強姦した犯人だと気づき、憤怒で白目を剥く場面が強烈で好き)もそうだけど、それ以上にアレックスの両親や政治家がどうしようもないのが酷い話だなこれ。刑務所にいた牧師のような、真っ当な人間もいるのが救いではあるけども。

ルドヴィコ療法でありとあらゆる暴力を詰め込んだ映画をアレックスが見せられるシーンは、ついつい『幽遊白書』の「黒の章だ!」と思ってしまった。