ロログ

ネタバレ映画感想とかいろいろ

『スパイダーマン / ノー・ウェイ・ホーム』感想

かつて私は『スパイダーマン2』の感想で

正体を知る人がいないから一人で全部抱えなきゃならず、他人に相談すらできない。スパイダーマンには『コナン』の阿笠博士のような、事情を把握した上で支えてくれる人がいない。ピーターは両親も亡くしてるし叔父さんはああいう形で失ったしで、あまりにも孤独な少年だったのだと今更気づいてちょっと愕然となった。

と書いたけど、MCU版ピーターにはMJもネッドもメイもいて、更にはアベンジャーズもいる。こちらのピーターも過酷な戦いに駆り出されるし楽をしているとはまったく思わないけど、仲間がいるという意味では恵まれた環境にあったんですね。しかし今回は、正体を世界中にバラされて状況が一変する。更にこれまでのスパイダーマンはトニーの尻拭いばかりをしてきたけど、今回は自分の問題のために安易に魔術に頼ろうとして問題を起こしてしまう(といっても雑な説明で済ませようとしたストレンジにも責任の一端はあると思う)。ここにきて初めてピーター自身が起こした問題と向き合うという意味で、今回はターニングポイントともいうべき作品になるのかもしれないな、と期待して上映最終日に滑り込みで鑑賞。面白かった。

「大いなる力には大いなる責任が伴う」という重要なテーマは『スパイダーマン』の作品ではベンおじさんの死と共に描写されてきたけど、MCU版ピーターも今回でとうとうメイおばさんの喪失と共にそれを学ぶことになる。これまでベンおじさんのエピソードは省略しただけだと思ってたのに、「ここで来るのか!」と衝撃だった。ピーター・パーカーは過酷な運命から逃れられないのだと言わんばかりの通過儀礼スパイダーマンの運命は十代の少年が背負うには辛いな……。五人のヴィランを自分なら救えるという驕りから、大切な人を失って心が折れるピーターを見るのも痛々しい。

そんなピーターを助けるために先輩二人が登場するけど、実は去年の年末(つまり日本上映前)にネタバレを見てしまったので、このことを知ってる状態で見たのが惜しい。それでも実際に見るとちょっと感動したし、クライマックスで三人の共闘という贅沢な映像を見せてもらえたのも嬉しいよね。チームの戦い方を知らない過去二作のスパイダーマンとチームの戦い方を知っているMCUスパイダーマン、という違いも楽しい(ここでもピーターが仲間に恵まれていたことが分かる)。おまけにライミ版スパイダーマンはグリーン・ゴブリンをグライダーから救い(ハリーも同じ死に方をしていたはず)、『アメスパ』版スパイダーマンはグウェンを失った時と同じシチュエーションで今度こそMJを救うという、二人の主人公への救済には目頭が熱くなってしまった。この二人との接点を作ったネッドが実は今回のMVPかもしれない(でもネッドが魔術師として本格参戦する展開を見たいとは、なんかあんまり思わないのだけども)。

ヴィランの中ではやはりグリーン・ゴブリンが凶悪で、スパイダーマンを煽るウィレム・デフォーが素晴らしい。まさかメイおばさんが別の世界の存在に殺されることになるとは思わなかったもんな。Dr.オクトパスは元々好きなヴィランだったけど、相変わらず可愛かった。エレクトロは彼の境遇に泣けたのに『アメスパ2』での扱いに不満があったから、今回でちょっと補完してもらえたかなという気はする。サンドマンリザードはあまり印象に残らなかったけど、まあしゃーないか。

しかし過去作のピーターとヴィランは救われた(といっても元の世界に戻った後の彼らが実際にどうなったかは分からないので、「恐らくは」と書くしかないけども)のに、この世界のピーターは大きな代償を支払うことになるのが、もう言葉もなかった。最初は自分のために特定の人を除くすべての人に忘れてもらおうとして、最後は「大いなる力には大いなる責任が伴う」という言葉を理解した上で世界中の人に忘れてもらうことを選択するのが悲しい。

ただ、MCU版オリジンとも言うべき今回でも先輩スパイダーマンの二人が協力してくれるんだから、彼は本当に恵まれているのだなとも思う。もちろんそれが悪いわけでもなく、むしろそれこそがMCUスパイダーマンの武器として捉えているので私は今回も楽しんで見た。それだけ愛されるキャラクターだという説得力もあるし、トムホが演じていることも大きいと思う。でも今回で彼も孤独になってしまったし、これからは自力でなんとかするのか、あるいは新たに手を差し伸べてくれる人がまた現れるのか、どちらにせよ彼の今後の成長が楽しみ。

ラストでトムハが出てきたのもいいサプライズでした。あの感じではヴェノムはMCUに登場するかもしれないけどトムハは本格的には参戦しないっぽいな……。