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『パラサイト / 半地下の家族』感想

コミカルでサスペンスフルで風刺が効いてて、ちょっと長めの映画なんだけど飽きることなく見られた。面白かった。あとやっぱりソン・ガンホはすごいなと改めて実感。特に終盤の表情には引き込まれた。

前半は貧困層の一家に富裕層の邸宅が侵食されていく様をテンポ良く描いており、大胆で強かなキム一家と、そんな彼らにホイホイ騙されてしまうパク一家の対比が面白い。キム一家の図々しさはちょっと鼻につくんだけど、彼らの未来はろくなことにならないだろうことは想像がつくので、あんまりイライラしなかった。ちなみにパク一家の方はそこまで悪い人たちではないけど、それでもちょっとしたところで滲み出る傲慢さがやはり鼻につくんですよね。富裕層には富裕層、貧困層には貧困層の性根みたいなものがあり、そこにはどうしようもない断絶があるしなかなか変えられないのだろうなと。現に寄生して富裕層と接することで、キム一家はそのことを思い知らされていく。逆に、パク一家は最後までそれを意識することはないのだけども。

特に嵐の夜、追い出したはずの元家政婦が再び邸宅を訪れたことが転機となり、以降は形勢が危うくなっていくんだけど、ここから怒涛のように描かれる「上」と「下」の落差が凄まじい。みんなでテーブルの下に隠れている時にパク夫婦がソファで盛り上がるところはコミカルに描かれるけど、「安物の下着」や「ドラッグ」を貧困層の象徴として興奮の材料にしようとするところや「匂い」の話からも、富裕層の差別意識がこれでもかとばかりに出ていて笑えなくなる。特に夫であり父親であるギテクは、妻や子供たちにも聞かれているから地獄。その後なんとか見つからずに逃げ出し、延々と階段を降りて自宅に戻るシーンも印象的だった。

自宅の地下に人がいることに気づかないのは富裕層の傲慢から来る無関心ゆえでもあるけど(ダソンもモールス信号を解読するけど行動には移さない)、だからこそ殺人を犯したギテクが警察に捕まることもなく、半地下よりも低い地下に潜って辛うじて生きていられるのは皮肉だな。そんな父親を助けるためにギウが真っ当に稼いであの家を買う計画を立ててるけど、ギテクが「計画を立てると、必ず人生その通りにいかない」と言い切っていたことを思うと難しいのではないか。希望のあるエンディングとも解釈できるだろうけど、私は夢物語でしかないよなと思ってしまう。寄生して甘い蜜を吸っても、寄生は所詮寄生でしかなく宿主にはなり得ないのだと。