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『来る』感想

見る前はゴリゴリのジャパニーズ・ホラーを想像してたけど、蓋を開けてみたらホラーも厨二もドラマもごちゃ混ぜにしたようなエンタメ作品だった。ホラーにしては怖くないというか怖がらせようという意志を感じないけど、私はホラー映画に怖さを求めているわけではなく、とにかく面白けりゃなんでもいい派なので『来る』には満足した。豪華なキャスト陣もいいし、豪華なだけでなくそれぞれの役者にきちんと立つキャラクターを割り振っているところも好み。面白かったです。

秀樹視点から物語は開幕するけど、この男の軽薄なモラハラ旦那っぷりが見事でもう笑うしかない。妻夫木聡が絶妙に演じるもんだから私も本気でムカムカしてもうたやんけ。正直、この空虚な承認欲求モンスターを見るだけでもすんげえ面白いんよねこの映画。サクッと殺されてしまうけど、その後は育児ノイローゼに陥っていく香奈視点でも秀樹の酷さが描かれるし津田も関わってくるので、更にムカムカしながらも楽しんでしまった。

三人目の主人公である野崎は育児放棄夫婦ほど「やな人間ドラマ」を見せられることはないけど、野崎のダメなところはありつつもなんだかんだで格好良いところと真琴の可愛さもあり、こちらも楽しく見てられた。何より琴子がいい。後半になってやっと顔を見せるキャラクターなのに、濃すぎて存在感は抜群だった。この辺りは岡田准一小松菜奈松たか子という役者の力もあるよね間違いなく。全員好きな人なので尚更。あーあと柴田理恵もやたら格好良かったな。

終盤の大掛かりな除霊の儀式は、中島哲也監督らしい映像演出もあってかなり楽しかった。"ぼぎわん" とも呼ばれる "あれ" の正体はよく分からないし曖昧なまま終わるけど、"あれ" に目をつけられた人々の人間性を浮き彫りにしていくドラマが面白かったのであんまり気にならなかったな。狙われたのが育児放棄の夫婦、恋人に堕胎させたことのある野崎、子供の産めない真琴、と全員子供が関わってるので、"あれ" も子供なのは間違いなさそうだけども。知紗が "あれ" と遊んでいたのも、相手が子供だったからなのかなと。