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『リトル・ミス・サンシャイン』感想

見る前は期待してなかったし別に見なくてもいいかなーとも考えてたけど、気まぐれで見てみたら予想以上に楽しめた。問題を抱えた個性的な一家の再生を描くちょっと下品なロードムービーが、こんなに面白いとは思わなかったな。キャストと音楽もいい。当たり前のことだけど、やっぱり実際に見てみないと分からんね映画は(映画に限らんけども)。見てよかった。

とにかく最高なのが、ポンコツのマイクロバスにみんなでドタドタ走りながら飛び乗るシーンを毎回ちゃんと入れるところで、あれが本当に見ていて愛おしい。ただ「みんなで車を走らせながらみんなが乗るだけ」の作業があの家族にとっては何よりも重要で、その光景がちょっと間抜けなのがまたいいんだよな。警官に捕まってトランクの中をチェックされるシーンとか、自分がパイロットになれないことを知って「ファーーーック!」とブチ切れるドウェインとか、会場のホテルに着いた時のフランクおじさんの走り方とか、印象的なシーンは他にも多くて楽しい。

ラストでも、恥をかくと知りつつオリーヴはミスコンに挑戦して祖父に教わった下品なダンスを披露する。審査員や観客がドン引きする中、家族も全員ステージに上がって「勝ち馬と負け犬」を決定づけるクソみたいなコンテストをぶち壊す。それまでの溜まっていたフラストレーションを吐き出すかのような、遺体となったおじいちゃんを含めた家族六人の暴走が心地良い。

自己啓発固執して常に鬱陶しい父親、そんな夫に苛立って煙草もやめられない母親、下品でヘロイン中毒な祖父、恋人をライバルに奪われて自殺未遂の伯父、ニーチェに影響されて喋らない兄、ミスコンに挑戦するも優勝の難しい妹。各々の問題は何一つ解決しないけど、それでも構わないのだと肯定して痛快に笑い飛ばす。ちょっと笑えてちょっと引いて、でもちょっと泣ける作品でした。