ロログ

ネタバレ映画感想とかいろいろ

『マイティ・ソー/バトルロイヤル』感想

クッソ面白かった。コメディ要素が強く、更にどことなく漂う『GotG』感に「何この悪魔合体?」と首を捻ってたけど意外にもハマっていた。ソーのこれまでの作品にもコミカルなシーンはあったけど、今回そこに思い切って舵を切ったのは英断だったんじゃないか。キャラクターがみんなイキイキしてて楽しそうだったし、クライマックスの戦いは燃えた。ここまでストレートに燃える、という体験を最近はする機会がなかった気がする。

冒頭はいきなり意外なキャストによるロキ追悼の寸劇を見せられるのが楽しいし、中身がロキとはいえ寝そべりながらブドウをむしゃむしゃ食うアンソニー・ホプキンスとかもう笑う。このロキの悪戯による掴みが良かったし、その後もドクター・ストレンジによって30分間ずっと落下させられたり、ソーが自分と同じくハルクにべちんべちんとやられてるのを見て思わずガッツポーズしたり、ソーとの「助けて」作戦などで仲の良さを発揮したりと、とにかくロキが輝いていた。最後にはアスガルドの危機にちゃんと駆けつけてくれるのも美味しい。あそこでソーが嬉しそうに笑うのがまたいいんだけど、その後のソーの覚醒でロキが何かを察したような表情になるのも印象的だった。きっとあれで王になるのは兄さんなのだと悟ってしまったのではないかなと。一方で例のキューブを盗んだっぽいのが、最後まで安心させてくれないロキらしい終わり方で好き。

もう一人輝いていたのがクローズアップされる機会にあまり恵まれていなかったハルクで、ハルクでいた期間が長かったからかそこそこ話せるようになっており、ソーとの迫力のある戦闘もソーとの砕けた会話も楽しい。意外な組み合わせだったけど、めっちゃ仲良しだなこの重量アタッカーコンビ。アスガルドの民を救うために、もう二度と戻れないかもしれない不安を押し殺して戦力になることを選んだバナーも格好良かったな。ハルクとフェンリスの戦いも、ある意味では獣同士ということもあって絵になっていた。

何より「元俺様な脳筋主人公」くらいのキャラに収まっていた感のあるソーの魅力がぐっと増したのが、かなり大きかったと思う。クリヘムはこういうコミカルな作品の方が合ってるんじゃないか。クライマックスで雷神として覚醒するところも「王道主役参上!」って感じでテンションがブチ上がった。ムジョルニアが無惨にも砕かれたのはショックだったけど、その分久しぶりにソーの素の強さを堪能できたことが嬉しい。ヘラも覚醒王子が脳筋パワーでどうにかするのかと思いきや、序盤に出てきたスルトを利用してアスガルドごと崩壊させるのがちゃんと理に叶っていて好きだな。あれほど栄えた惑星が滅んだのは痛いだろうけど、偽りの歴史の上に成り立っていた欺瞞の王国になっていたらしいので、ここでリセットできたのは悪くはないかなとも思う。スルトアスガルドを恨むのもオーディンのせいだというし、彼も可哀想な存在だったのかもしれない。というかオーディンがクソ親父なんだよね本当に。ヘラは悪人ではあるけど同情できるところもあったし、死ぬ直前にヘラという厄介な存在のことを教えて息子に押し付けるのも腹が立つ。ソーたち兄弟が殺し合ってることが多いのも、だいたいオーディンのせいじゃねーか。ソーやロキへの接し方に問題のあるじいさんだなとずっと思ってたけど、最後までろくでなしだった……。

ヘラは演じているのが最初は誰だか分からなかったけど、喋り出したらすぐに分かったのが面白かった。ケイト・ブランシェットの声が好きなんですよね。単純に強かったし、中の人の影響もあって結構好きなヴィランだったな。他にも花火をバックに闊歩するシーンが格好良すぎたヴァルキリー、強烈なキャラクターだったサカールのグランドマスター、武器の名の通りデストロイを披露した末に死んだスカージ、中身も外見もイケメンなヘイムダルなど、美味しいキャラが多かった。それだけに、ウォリアーズ・スリーがあっさり殺されたのはちょっと残念だったけども。

総じて今作はヒーローやヴィラン、他の脇キャラに至るまでキャラクターが輝いていて、その上できちをやと盛り上げてくるタイカ・ワイティティの手腕に惚れ惚れした。キャラクターをきちんと立たせて描く、という基本の重要性を実感できる。それくらいリベンジャーズは最高でした。