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『鬼畜』感想

鬼畜

児童虐待が延々と描かれるとは聞いていたので見る前は気が重かったけど、何故か一気に見れた。いきなり修羅場から始まるから冒頭から引き付けられるし、宗吉にしろお梅にしろ夫婦が子供を疎ましく思うところに説得力があり、これがまた嫌な気持ちにさせてくるのだけど、しかしだからこそ面白いというか。宗吉もお梅も菊代も無責任なクズなのにそれぞれが被害者面をしており(実際、被害者と呼べる側面はある)、そんな鬼どもが跋扈する地獄を堪能しました。

子供に恵まれなかったお梅が夫の愛人の子供を愛せないのは理解できるし、宗吉は言うまでもなく、鬼のようなお梅にだって罪悪感はあるんですよね。だから赤子が死んですぐに激しいセックスをして現実逃避するし、宗吉が利一を殺すために旅行に行った時は気もそぞろで落ち着かない。岩下志麻のギョロッとした目が印象的でした。

最後の利一の父親を否認する言葉は、父親を庇いたかったからというのもあっただろうけど、同時に決別の意味もあったのだと思う。相反する気持ちを同時に抱えることは珍しいことでもなく、それは宗吉も同様で、息子を愛しているけど重荷だから排除したいとも考える。だから利一が崖のそばで転倒したら心配して即座に駆け寄るし、そのくせ海に息子を投げ捨ててしまう。殺そうとしたくせに、助かったと聞いて安堵もする。そうした葛藤を緒形拳が好演していてすごく良かったな。

しかし驚いたのが本物の赤ちゃんを登場させて虐待シーンを撮っていたことで、赤ちゃんはもちろんだけど岩下志麻も心配になってしまった……。