ロログ

ネタバレ映画感想とかいろいろ

『インターステラー』感想

ロマンに満ちた壮大な物語だった。まあノーラン監督の作品は毎回ロマンに溢れているので「いつものノーラン」と言えばそうだけど、私はそうした「いつものノーラン」みたいな映画が大好物なのでかなり楽しめた。ストレートなくらいに愛も強調されており、この手の作品は見ていて白けてしまうこともあるけど、『インターステラー』は愛によってエモーショナルな展開へと繋げていく手腕が良かったのもあって素直に感動できた。

小難しい話も出てくるし相対性理論についてはぼんやりとしか知らない私には理解できない台詞も多かったけど、それらはハッタリとして上手く機能していたと思うし、次元やブラックホールの中の映像化、個性のある未開の惑星、絶妙なタイミングで盛り込んでくるサスペンス的展開、あざといくらいのハンス・ジマーの音楽などで上手く騙してくれる。しかしノーラン監督がこんなお手本のような伏線回収劇で魅せてくるとは、ちょっと思わなかったな。

真っ先に言いたいのが楽しいロボットの存在で、特にTARSはクーパーの相棒感もあって最高だった。ラストでクーパーが即座に彼を直してやるところもいいよね。真面目で寡黙なCASEも可愛かった。ミラーの惑星で大津波を前に変形して活躍するシーンがいい。

他にも印象的なシーンは幾つもあるけど、一番面白かったのは回転する母船とのドッキングをクーパーが一か八かで試みるシーンかもしれない。ベテランパイロットらしい活躍で格好良かった。マン博士の暴走から気の抜けない場面が長く続いていたのに、飽きを感じさせずぐいぐい引っ張ってもらえたから思わず夢中になってしまった。疲れたけど心地良い疲れでした。

この映画はクーパーとマーフの親子が中心になってるけど、肝心のマーフはあまり好きじゃなかったな。後半、トムを自宅から引き離すためだけにトウモロコシ畑に放火するのもいただけない。ただ、それでも親子の物語に感動できたくらいにはストレートな脚本だったし、やっぱり盛り上げ方が上手かったのだと思います。クーパーが地球に帰ってマーフと再会した後、アメリアのいる星に再び発つのもいい。かつては父を送り出せなかったマーフが今度こそ素直に送り出し、クーパーも娘のためではなく、今度はアメリアと人類のために銀河を越えるのが熱い。序盤の、トウモロコシ畑を車でガーッと突っ切るシーンも好きだな。

クーパーとマーフ以上に印象に残ったのがマン博士で、卑怯者のクズではあるんだけど、孤独に負けてしまった彼の気持ちも分からなくはない。人間にとっての一番の恐怖は底なしの孤独だと私は普段から考えたりもしてるから、尚更というか。しかし銀河も越えて遠く離れた惑星でまで格闘するクーパーとマン博士を見ていると、虚しい気持ちになってしまうな……。ところでマン博士役がマット・デイモンだったことには驚いた。『プライベート・ライアン』で「出てたんかい」と驚かされたのに、『インターステラー』でも同じような体験をしようとは。『オデッセイ』で彼が演じた主人公とマン博士は状況が近いんだけど、キャラクターは全然違うのがまた面白いなこれ。

クズと言えばマン博士以上に悪質だと思ったのがブランド教授の嘘なんだけど、こちらも彼の考えを理解できなくはないんですよね。それでも娘や他人を騙して重すぎる任務に向かわせるんだから、嘘をつくのは誠実じゃないよなやっぱり。ただ、一人ぼっちにされたアメリアの様子から、希望を感じさせる結末で締めていたのは良かったなと思えた。