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ネタバレ映画感想とかいろいろ

『インファナル・アフェア』感想

以前この映画を見た時、あまりに面白くて興奮したものだけど、今見返してもやっぱり相当に面白かった。「敵同士だけど理解し合える唯一の相手でもある」という関係に弱いので、ヤンとラウの関係は刺さるんよな。二人ともスパイとして生きていくことになるけど、本心では真っ当でいることを望んでいるから合わなくて、それが故の葛藤も美味しいし、だからこそ孤立していくのも最高。特にラウは今後も一人で地獄を歩いていかなければならず、どんな理由であれ、一度は真っ当な人生から外れてしまうと地獄の連鎖からは抜け出せなくなる、ということを体現させられる彼の姿にゾッとする。彼が警官として有能だからこそ、皮肉が更に効いているのがまたいい。

ヤンはラウとの対比だけでなく、ウォンやリーとの関係も良かったな。中でもウォンの死体が屋上からタクシーのルーフに落下するシーンは衝撃的で、自分が警察官であることを証明してくれる唯一の人間の喪失であり、長く自分を気にかけてくれていた上司の喪失でもあって、死体を前にしたヤンの表情が痛々しい。序盤、警察学校長の霊柩車を路地裏から人知れず敬礼して見送る姿も、一瞬のシーンなんだけど切なくて好きだった。あと「疲れた男の色気」が大好物なので、そういう意味でもこの映画は美味しい。ヤン役のトニー・レオンカップラーメンを食べている時でも妙な色気があった。

ただ、双方の組織に内通者がいたことが判明し、二人がそれぞれ調査を命じられることに説得力がないのはちょっと気になる。ヤンのほうはサムも完全に信じているわけではなかったようだけど、ラウは警察の上層部にすっかり信用されていて、でも何故信用されているのかが分からない。ラウはこれまでの調査に関わっているんだから、むしろ容疑から外すのは解せないんよね。それと若い頃の二人の見分けがつかない。せめて髪型はもーちょい変えてもよかったのでは。

と不満もつらつらと書いたけど、オールタイムベストに入れるくらいに特別な映画であることに変わりはなく、話の内容を忘れかけた頃にまた見返すんだろうと思います。