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ネタバレ映画感想とかいろいろ

『葛城事件』感想

後味の悪い話を堪能したくて本作をチョイスしたら、しっかり地獄を味わえた。この作品における「家族」ってのは呪いでしかなく、普段の息が詰まるような家族の時間も、保の自殺も稔の殺傷事件も、全部が淡々と描かれていたのが印象的でした。清が自殺しようとして失敗し、そのまま何もなかったように食事を再開して静かに終わるエンディングも良かった。清を始めとした家族全員が特異な人間というわけでもなく、普通にそこらへんにいそうな人ばかりだったのも、観ているこちらの気持ちをゆっくり沈めていくような重さがある。

唯一、この家族に外から関わろうとする順子だけが異質に見えるんだけど、実は清と同じく「薄っぺらい理想の家族像を他人に押し付ける人」だったのが納得というかなんというか。あとこの作品は過去と現在の様子がシームレスに展開されていくけど、順子の存在もあってあまり混乱しないのも良かった。

解決策も救いもないまま終わるから、最後は後味の悪さが残る。グサグサ抉られたりはしないけど終わった後にじわじわ効いてくる。そこがこの作品の肝でもあるけど、私は基本的にカタルシスを求めるタイプなのでその点で物足りなさも感じてしまった。もうちょっと容赦なく抉られたかったなと。