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『ジャンゴ / 繋がれざる者』感想

マカロニウエスタンは詳しくないけど(見たと言えるのは『BTTF3』かもしれないレベルなので西部劇は見てないに等しい)、二時間半を越える長尺が気にならないくらいにすんげえ面白かった。飽きる場面はほぼないほど濃密だし(しょーもないことでやんややんやしてるKKKみたいな集団のシーンはかったるいけど嫌いじゃないから困る)、ストーリーもストレートだし、「ニガー」「ニガー」言い過ぎだろと突っ込みたくなるほどにタランティーノ監督が好き放題やってるし、音楽の使い方があざといのもたまらんし、効果音とセットで入る高速ズームインなどのカメラ演出はノリノリだし、血飛沫と銃声と死に様が大仰で最高だし、いちいち画への拘りが見えて楽しいし、ラストのカタルシスにも酔わせてくれる快作でした。タランティーノ監督作は他に『イングロリアス・バスターズ』しか見てないけど、今のところかなり好きな監督かもしれない。

なんつってもジェイミー・フォックスクリストフ・ヴァルツレオナルド・ディカプリオサミュエル・L・ジャクソンと見事に好きなキャストが集まっていたのでそれが目当てでもあったのだけど、みんなそれぞれにキャラクターが強く魅力的だった。かと言って互いが互いの存在感に押し潰されるようなこともなく(ジャンゴは終盤までは少し大人しいけど)、むしろ互いに押し潰そうとするかのような勢いなのに潰れず、各キャラクターのオーラが限界まで画面にギチギチに押し込まれているような豪華な感覚があった。好きなキャストによる演技合戦を見れるんだから、地獄の殺戮劇すら私には天国だったな。これは指揮者であるタランティーノ監督の采配によるものだと思う。

特に印象的だったのが悪役の二人で、まずキャンディという農園の主人は享楽的なお坊ちゃんぶりが輝いていた。流血しながらの謎演説はおかしいんだけど、ディカプリオの熱演で妙な迫力があってだいぶ面白い。初登場時のドヤ顔も笑う。そしてそんなお坊ちゃんに仕えるスティーブンの白人に従う愚鈍な召使いに見えて実は屋敷を掌握している黒人、というキャラクターが濃すぎる。スティーブンが道化に見えるけど実はキャンディのほうが道化である、という皮肉的なこの主従関係が楽しすぎた。キャンディが殺された瞬間に嘆いたのも、宿主を失ってしまったからなんだな都合良く寄生していたかったから。あとここでもきちんと「マザーファッカー」は忘れないところに吹いた(字幕も空気を読んでいる)。

主役はジャンゴだと思うけど、ジャンゴとは師弟であり相棒でもあるシュルツはかなり目立っていた。過去が語られないから何故あんなに奴隷制度を嫌悪しているのかは分かりにくいんだけど、それでもシュルツが印象に残ってしまうのはクリストフ・ヴァルツが強すぎるからか何なのか。歯医者から賞金稼ぎになったのも大きな背景があるのだろうけど、そこら辺をもっと知りたかったな。ちなみに馬車のてっぺんでびょんびょん揺れる歯の模型?が好き。

それでも主人公はやっぱりジャンゴで、ジェイミー・フォックスがひたすら格好良かった。彼には甘さがないからシュルツ以上に冷酷な面もあるけど、それも白人の酷さをよく知っていることと、あとはブルームヒルダを救いたいがためなんだろうな。そんな中、雪だるまを相手に射撃訓練に励むシーンが好きだったな。そして最後にスタッフロールが終わって「奴は何者だ?」からのタイトルロゴが一瞬出る演出も気持ち良かった。痛快。