ロログ

ネタバレ映画感想とかいろいろ

『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』感想

名作。個性的な登場人物、それを具現化する演者、台詞のチョイス、引き込まれるストーリー、悲壮感の漂う重厚な音楽、これらすべてが高水準で面白かったし、何より私の好みに合致した。ハイクオリティかつ面白い、てのはもちろん重要だけど、自分に刺さるかどうかはもっと重要なので、面白くて好みの作品に出会えたのが嬉しい。鑑賞中は幸せだったな重いストーリーなのに。三つの時系列が入り混じる構成も本来なら苦手だけど、刑事と取調室、学生服、その他、と目印が明確で判別しやすかったのがありがたかった。

見る前は難しそうな話に思えたし、実際序盤はついていくのがちょっとしんどかったけど、アランの魅力にすぐやられて引き込まれていった。「孤独で寂しい人」が刺さる私がこの作品に夢中になるのは当然だったんよな。アランに多大な影響を与えた、親友であり仲間でもあったジョーンも魅力的だった。この二人は互いに恋愛対象にはならないけど信頼できる者同士ではあって、そんな関係で婚約することになるのがまた最高すぎる。他にも最初は反発してたけど徐々にアランを信頼するようになったヒュー、アランとみんなの間の緩衝剤かと思えばソ連のスパイとして泳がされていたケアンクロス、軍の非情さを体現するかのようなミンギスと、アランを取り巻く人々はみんな良かった。最初は暗号解読にフォーカスを当てた作品だと思っていたので、こんなに濃厚な人間ドラマが堪能できるとは思わなかったな。

エニグマ解読の瞬間も熱かった。人間を超えるエニグマに対抗するにはマシンしかないからマシンを作り、でも解読の最後の決め手になったのは愛で、そこに気づけたのが心の機微を理解できないアランだったからこそ、てのがもう胸に来る。そんなアランが、マシンに「クリストファー」と名付けていたのも泣ける。学生時代のアランが、「クリストファーの病死」という事実よりも「彼の病状を全く知らされていなかったこと」の方にショックを受けていたのも切ない。結末も予想できたとはいえ、孤独なアランの最期があんまりにもあんまりでやり切れなかった。ただ、最後に彼の功績が現在につながっていることを告げる一文が入るのは鳥肌が立つ。大満足の一言。

ところでベネディクト・カンバーバッチは今回初めて知ったけど、演技はもちろんミラ・ジョヴォヴィッチ並みに名前も好き。なんかいいよね「カンバーバッチ」て。