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『ハドソン川の奇跡』感想

トム・ハンクスの64歳の誕生日に鑑賞。いい映画だった。イーストウッド監督作品は初めて見たけど、無駄なく淡々と進むから見やすかったし、短くサクッと終わるのも好み。

実際に起こった飛行機事故が題材になっているものの、事故をスペクタクルに描くのではなく、事故が発生した当時を振り返りつつ事故後のサリー機長の苦悩を描くという予想外の構成。事故発生時の回想は何度か挿入されるけど、徐々に情報量が増えて公聴会で全てが再現されるのが面白かった。この回想で「自分だけの力ではなく、事故に関わった全ての人の働きがあったからこそ全員が生還できた」というサリーの言葉が実感できるようになっているのもいいな。だから救助隊やフェリーの船長だけでなく、乗客同士で助け合う光景もきちんと描かれている。あと冒頭が「サリーが判断を誤ってニューヨークの高層ビルに衝突する」という悪夢から始まるのも度肝を抜かれた。どうしても9.11の地獄の光景が脳裏に蘇ってしまうし、おかげでいきなり物語に引き込まれてしまった。上手い導入でした。

クライマックスの公聴会も淡々と描写されているのが良かった。あっさり終わる印象もあるけどわざとらしくないし、未曾有のトラブルに対して冷静であり続けた機長の物語の終幕としても相応しいのではないかなと。そんな中でのジェフ副機長のささやかなジョークも、緊張感の続く公聴会の締めとしては最高だったと思う。NSTBの面々も含め、プロフェッショナルの仕事の重要さを改めて痛感させてくれる作品でした。これは奇跡ではないのだと言う機長の言葉にも重みがあるし、だからこそ『ハドソン川の奇跡』という機長の意志を無視したような邦題に萎えるけども。