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『トータル・リコール』感想

NASAの探査機が火星に着陸したというニュースを見てこれをチョイス。演出は今見ると古いしB級感もあって荒々しいけど、未来の地球やディストピアな火星の世界観は独特で良かったし、思い切った悪趣味なゴア描写やグロ表現もタイムレスな魅力があって惹きつけられた。ストーリーもテンポ良く進行していくから飽きないし、シュワちゃんシャロン・ストーンはやっぱり華がある。

人間が火星で外に放り出されたことで顔が膨張して目玉と舌が飛び出そうになったり、脳に埋め込まれた発信機をクエイドが鼻から取り出したり、検問所でおばちゃんの顔がスライスされて中からクエイドが現れたりなどの有名なシーンや、おっぱい三つのメリーさんや他人の体に赤ん坊の姿で寄生しているクアトーなどのミュータントの強烈なビジュアルもいい。これらはすべて気持ち悪いのに、不思議な魅力があって目が離せなかった。今ならもっとリアルに表現出来るのだろうけど、当時の技術力ならではの味があってとても好き。

ストーリーも面白かった。最後はホワイトアウトするので夢オチだろうけど(恐らく序盤のリコール社で火星の夢を思い出してクエイドが暴れるところからが夢)、安易な夢オチにはなっていないのがいい。中盤にホテルでリコール社の医者がクエイドを連れ戻しに来たけど、あれは本当だったのだと私は考えていて(医者が汗をかいていたのは顧客を再び植物人間にしてしまうことを避けたくて必死になっていただけだと思う)、要するにクエイドは夢に酔い続けていたせいで植物人間になってしまった可能性が高い。『トータル・リコール』は夢に惹かれた男が夢に飲まれてしまったという、メッセージ性の強い作品だったのだなと。メリーナのことを「現実の女だ。以前から夢で見てた」というクエイドの言葉も滑稽に聞こえてくるのも面白い。また夢じゃなかったとしても、本来の人格が植え付けられた人格に乗っ取られてしまう話だと考えると恐ろしいし、これはこれで好みなんだよな。まあクエイドとしての彼をずっと見てきたからクエイドに肩入れしたくなるし、ハウザーがクソ野郎なのでざまあ感はあるけども。ただ、ちょーっと気になるのは最後のコーヘイゲンの台詞。

「エネルギー鉱山が反応して火星は溶解する。エイリアンはそれを知ってて点火しなかった」

これを虚言だとクエイドは一蹴したけど、事実だったら話が変わってくる。クエイドは火星を救うためにリアクターを起動したのに実は火星を滅ぼしてしまったことになるわけで、最後のホワイトアウトも火星崩壊の前兆と見ることも出来てしまう。コーヘイゲンとハウザーも、彼らなりにきちんと火星を管理しつつ甘い蜜を吸っていたのかもしれない。まあクエイドを生み出したのは彼らなので見通しが甘かったという話になるけども。あとコーヘイゲンがハウザーのことを本当に親友だと思っていたのも意外だったな。ハウザーを抹殺するしかなくなって苛立つコーヘイゲンと、嬉々として抹殺命令を受けるリクターの反応が面白かった。

こうして如何様にも解釈できるのも『トータル・リコール』の面白いところだと思います。見ている最中も見終わった後も楽しかった。