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『サバイバルファミリー』感想

サバイバルファミリー

サバイバルファミリー

  • 発売日: 2017/09/20
  • メディア: Prime Video

電気が使えなくなってサバイバル生活を余儀なくされた一家をコミカルに描くコメディ──かと思ったら、結構ヘビーな上に「電気が使えなくなる」なんて生優しいものではなく「電力という概念そのものが消失する」世界だった。だから乾電池は意味がないし、予め充電されていたものですら動かない。要するにファンタジーなんだけど、「電力で動くものは全部動かない」という徹底した設定は分かりやすくて良かった。一応最後には原因について言及されるけど、敢えて雑な扱いにされているのが気楽でいい。暴動が起きて無法地帯になるようなことがないのも、日本ならあり得そうだと思える。こんな感じで特異な災害シミュレーション映画として楽しんだけど、東京から実家の鹿児島に向かうというロードムービーでもあって、主な移動手段が車や列車ではなく自転車、てのがまたいいよね。自転車で高速道路を走るシーンとかちょっと羨ましかったもんな。

災害を通して描かれるのは家族の再生物語で、特に小日向文世がこんな嫌な父親を演じているのがちょっと予想外。これまで「いい人」を演じるところしか見てなかったから驚いたけど、常に見栄っ張りで家族をすぐ馬鹿にするところなどはリアルで、こういう言い方もなんだけどすごく良かった。父親に限らず鈴木家は舌打ちの飛び交う家庭で、舌打ちってほんと嫌な気分になるなという当たり前のことも実感させられた。

序盤の羽田空港に向かおうとする甘い判断には疑問だったけど、実際にああいう状況になってしまうと悠長な考えになりがち、というのはあるかもしれない。しかし通天閣どん底に叩き落とされてからの改心はちょっと急だったなと。あとライフラインを断たれた都会の様子は面白かったけど、後半はちょっと失速気味。やはり「都会でいられなくなっている都会」を見ている時が一番面白いんだよな。ただ、トンネルを通過した汽車の中で、人々が煤だらけになった隣人の顔を見て笑い合うシーンはちょっとじーんと来た。

ところで家族といえば、異様な状況を楽しむ時任三郎藤原紀香を始めとした優雅でキラキラした一家の登場が異質で面白すぎた。中でも藤原紀香のオーラがすごい。あれが一番笑った。