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『ラッシュ / プライドと友情』感想

実在した二人の天才レーサーの対決と友情を描くドラマ。F3時代の二人の出会いから重要なエピソードを拾って(恐らくは多少の脚色も入れて)上手く繋げてバランス良く見せてくれるので、F1がさっぱり分からない私にとっても見やすく面白かった。特にハントがマクラーレン所属になってからのレースは、テンポ良くサクサク見せてくれるのが気持ちいい。レースシーンも迫力満点で、雨天の中のデッドヒートなんかは視界の悪さがよく伝わるだけに緊迫感もある。そして何よりも二人の主役がいい。ワイルドだけど実はナーバスなハントをクリヘムが好演していたし(髪型は似合ってないなと思ったけど)、ストイックだけど口の悪いラウダを演じたダニエル・ブリュールも素晴らしかった。この二人のキャラクターと役者があったからこそ面白い作品になったのだと思います。いちいち張り合って子供みたいな舌戦を繰り広げる二人を見ているだけでも楽しい。

印象的だったのはやはり雨のドイツGPでのラウダの事故で、その後は病室でも辛い戦いを強いられ、その度にテレビで勝利を重ねるハントを見て踏ん張るラウダの姿が壮絶。一方で、謝罪の手紙を書こうとして上手く書けないでいるハントも良かったな。ここはさり気ないシーンなんだけども。

日本GPでのラウダの決断もぐっと来る。普通なら彼を走らせてハントとの派手な一騎討ちで決着をつける展開にすると思うのだけど、ラウダが棄権してからもハントの決死の走行で盛り上げてくるのが燃える。ここで棄権するのがラウダという男で、ここで諦めないのがハントという男なんだな、ということを如実に伝えつつもきちんとドラマティックな流れになっているのが最高だった。

二人は性格も考え方も生き方もまるで正反対だから衝突も多いけど、「宿敵の存在を呪わず神の恵みだと思え」という言葉通りの関係でいられるのが良かったんだろうな。ド直球なライバル同士の熱い物語は久しぶりに見たけど、やはり王道はいいものだなと実感させてくれる良作でした。