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『ナイチンゲール』感想

ナイチンゲール (字幕版)

ナイチンゲール (字幕版)

  • アイスリング・フランシオシ
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英国将校に尊厳を蹂躙され尽くしたアイルランドの女が、アボリジナルの男と共に復讐の旅に出る凄絶なドラマ。といっても単純な復讐劇にはなっておらず、赤裸々に描かれる暴力と迫害が生々しく、見ているこちらの気が滅入ってしまったほど。それでも面白かったし凄い作品なのも確かだと思う。私の好みじゃなかったけども。

とにかくホーキンスという将校があんまりにもクズで下衆で下劣で鬼畜で残虐で矮小でどうしようもなく救えないレベルのクソ野郎で、なんつうかある種の感動が芽生えた。サム・クラフリンがまた上手いんですよね。仕事にやる気がなく素行も最悪で、でも栄転はしたいから上司には取り入ろうとするも失敗。今度は八つ当たりのようにクレアを夫の目の前で凌辱し、夫を銃殺し、泣き喚く赤子を殺させ(赤子の殺され方がまたむごたらしい)、ルースにもクレアを凌辱させる。更にアボリジナルの母親も犯して殺し、自分に付き従う幼い少年もうるさいからという理由で殺し、部下や現地の案内役に対しても差別的に振る舞うし殺すことにも躊躇いがない。ちんこもげたらいいのになこんな男! クレアが復讐のために原生林に足を踏み入れてからはさすがにクズ描写はもう無さそうだな、と思ってたら道中でもしっかりクズムーブかますの笑ってもうたね〜。私が見てきたクズキャラランキングベスト3には確実に入りますよ彼。

しかしクレアはそんなホーキンスを殺せない。そういうところがリアルだとは思うけど、ホーキンスやルースが極悪非道の男としてよく描かれていただけに、復讐が中途半端なまま終わったのは不満が残る。そういう作品ではないと分かってはいるけども。ただ、チャーリーが殺されたことでビリーにもホーキンスへの憎悪が生まれ、復讐に対して葛藤を抱くクレアと役割が逆転するところはなんだか遣る瀬無くて、その遣る瀬無さは好きだった。

クレアについては、感情が突っ走るなど場当たり的な言動が多く何度もイライラさせられた。彼女を可哀想だと思うしホーキンス死すべしとも思うし、一方で人を殺したことで己の浅はかな覚悟を自覚して逃げようとする気持ちも分かるんだけど、ビリーを巻き込んで迷惑をかけているのが気になるんだよな。本人は何も出来ないどころか足を引っ張るから尚更(ビリーが有能すぎるとも言う)。相容れない者同士だったクレアとビリーが戦友のような関係になっていくのは良かったと思うけど、私は結局クレアという主人公を最後まで好きになれなかったので、そのことが大きく響いてるっぽい。