CIAとKGBのスパイ同士がコンビを組む王道バディムービーで、真新しい要素はないんだけどキャラクターが魅力的だったのでニヤニヤしながら楽しんでしまった。時代が時代なだけにハイテクなデジタルガジェットは出てこないし展開やスパイのお約束ネタのチョイスも古いんだけど、そこがレトロで良いというか。OPの演出、雨傘にトレンチコート姿の主人公、当時のベルリンの街、グリーンの公衆トイレなど序盤から映像面でもワクワクした。ソロのスーツやイリヤのハンチング帽もツボなんだけど、特にギャビーは派手に衣装が変わるから目の保養になる。サングラスや髪型も含めて可愛かった。
でも一番の見どころはやはりスパイ二人の関係で、ごつい男同士であんなちっこいベスパに二人乗りしてせこせこ走ってる画が出た時点で優勝ですよもう(スペイン広場でソロがベスパで登場するのは『ローマの休日』のオマージュだろうから余計に面白い)。互いのスキルを見せつけて張り合ったり盗聴器を仕掛けあったりと、いちいち仲良しで微笑ましい。中でもボートチェイスのシーンはソロがトラックに乗り込んでラジオとワインとサンドイッチを堪能しつつ、追手から必死に逃げるイリヤを鑑賞してて笑った。鬼か。かと思えばしれっとイリヤの時計を取り返していたのがずるい人だな本当に。このコンビはどちらも抑圧された状況で仕事してきたようだけど、ソロのそれでもまだ余裕のある感じがヘンリー・カヴィルの持つ空気ともハマっていた。逆にイリヤは不器用なところがすごく可愛いんだけど、誰かに上手くガス抜きさせてもらった方が良さそう。それがソロやギャビーだったりしたらいいなと思えるあたり、キャラクターとキャラクターの関係性においては本当に魅力的な映画だったなと思う。最初のカフェでの説明の後に「あとは若い人同士で」と上司が去っていくところも吹くんだよな。お見合いか? 最後にタイトルの意味を回収した後、そのままパンフにでも載ってそうな各キャラの設定を開陳しつつエンドロールが流れる演出も "オタク" って感じがして最高。ああいうのに弱い。
気になったところもある。一度は敢えて伏せて流したところを、時間を遡って改めて明かす演出が小出しに入るのは鬱陶しかった。一回だけならともかく何度も入るからかなりテンポを削いでしまっている。
ところで続編がありそうな終わり方だったけど、闇が深そうなイリヤのエディプス・コンプレックス設定の掘り下げや、ソロの日本語堪能設定もどこかで活躍してくれたら嬉しい。ウェーバリーも美味しかったから彼にももっと出番が欲しいし、結局キスが出来なかったイリヤとギャビーの可愛い恋のその後も見たい。