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『クレヨンしんちゃん / 嵐を呼ぶ 夕陽のカスカベボーイズ』感想

野原一家やかすかべ防衛隊が映画の中に飲み込まれてしまい、元の世界に戻ろうと奮闘するドラマ。今回はタイトル通りのカスカベボーイズの話で、かすかべ防衛隊より野原一家が見たい私には合わないのでは、とちょっと考えたけど、見てみたらかすかべ防衛隊もいいなと思えたほどに楽しめた。中盤まではちょっと中弛みもあるけど、これは「停滞している世界」が舞台だからしょーがないのかもしれない。それでも後半からは一気に盛り上げてきたし、終わり方もすごく好みだった。これは嬉しい誤算だったな。

なんだかんだで夫婦生活を満喫しているマサオくんとネネちゃんとか、地味な活躍が多いインディアンなボーちゃんとか、風間くんが春日部でのことを実はちゃんと覚えていたこととか現実世界での本音を漏らしたこととか、テレビアニメシリーズやコミックスを通っていない私には彼らが掘り下げられたことで魅力を大きく見出せたのが今回は大きかったのだろうなと。その分、終盤でヒーローになる五人の活躍も気持ち良かった。列車アクションのある映画は名作。

しんちゃんもマサオくんが結婚していると知った時の焦りっぷりが面白かったし、つばきに仄かな恋心を抱くのも可愛い。汽車の中で必死にプロポーズするシーンは最高。そのつばきはビジュアルも含めて『クレしん』ワールドの住人に見えないヒロインだなとは思ってたけど、まさか映画の中の存在だったとはまったく予想出来なかった。違和感のあるキャラクター造形は伏線だったのか……。しんちゃんの切ない恋はちょっとぐっと来たし、つばきが現実には存在しない人だと知って打ちのめされるしんちゃんと、そんなしんちゃんを慰める四人がまた可愛らしかった。

ジャスティス知事は明確な悪役なので、映画が終わるということは自分が倒されるということでもあり、だからこそ「おわり」を封印していた。が、そうすれば話が進まなくなり、今度は停滞した時間を無限に生きなきゃならないという地獄がある。だから、どう足掻いても救われない存在なんだな彼は。つばきや現実世界の住人など色んな人を巻き込んでいるから同情はしにくいけど、哀れな人ではあったと思うんですよね。