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『イングロリアス・バスターズ』感想

イングロリアス・バスターズ(字幕版)

イングロリアス・バスターズ(字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video

勿体ぶったような会話劇とその末に爆発する暴力のカタルシスをぐわっと詰め込んだような、それでいてとっつき易く痛快な群像劇だった。二時間半もあるのに長さを感じないほどで、ブラックコメディやバイオレンスを織り交ぜつつサクサク進んでいくのが楽しい。バスターズの出番が思ったより少なかったのは拍子抜けしたけど、ブラピが楽しそうに演じていたのでまあいいかなと思っちゃうんだよな。

最大の見どころはクリストフ・ヴァルツ演じるランダ大佐のキャラクターで、序盤の酪農家とのやり取りからランダの底知れぬ恐ろしさが漂っていてたまらなかった。紳士的な振る舞いの中に匂い立つ獰猛さが最高。ショシャナとの緊張感を孕んだ食事や、アルドを捕まえてニッコニコで「That's a bingo!」と言ってはしゃぐシーンも素晴らしい。あとこの映画は色んな言語や訛りが聞けるのも楽しかったけど、特にアルドがランダの前でイタリアンを装うシーンはイタリア語がヘッタクソで笑った。煽るように対応するランダも最高すぎる。その上でラストではアルドが「上の命令? そんなものは知らん」とばかりに、賢しらに立ち回るランダの額をナイフで切り刻むのが痛快。欲を言えばアルドのそうした性質をもっと描いて欲しかったけども。しかし額にハーケンクロイツを切り刻んだり頭の皮を剥いだりバットで殴り殺したりするところはいくらなんでも直接には映さんのやろ? と舐めてかかってたら普通に映すからびびった。グロには慣れたつもりでいたけどそれでも最初は「ヒエッ」ってなるな……。

他に印象的だったのはドイツの英雄フレデリックで、「一見好青年に見えるけど無自覚に傲慢で鬱陶しい男」っぷりがよく出ていてとても良かった。本当にイライラさせられたもんな。まあ彼のおかげでショシャナにナチへの復讐の機会がやって来るのだけども。

ストーリーも家族を殺されたユダヤ系のショシャナによる復讐劇とユダヤアメリカ特殊部隊バスターズによるナチ狩りを中心に、二つの暗殺計画が交差してすべての思惑が小さな劇場に収束していくのが面白かった。クライマックスも「敵兵を殺すドイツの英雄を映したプロパガンダ映画を見て沸くナチ」と、その「映画を見ているナチを殺すバスターズとショシャナ」と、その「ナチを殺すバスターズとショシャナが殺す映画を見て沸く私」という図がいい。タランティーノ監督作を見るのはこれが初めてなんだけど、「映画」が好きな人なんだろうなというのは私にも伝わった。

ただ、地下酒場のシーンはもうちょいカットしても良さそうな。ここだけはちょっとだれた。とはいえ私には終盤の劇場よりむしろここの銃撃戦のほうが印象に残っているので、あの長い溜めは必要だったのだと認めざるを得ないのか。うーん。