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『コラテラル』感想

無関心な人間が集うロサンゼルスという都会の片隅で、タクシードライバーと殺し屋が出会って地獄なんだかそうでないんだかよく分からないドライブへと展開していく奇妙なサスペンス。トム・クルーズが悪役をやってて人を殺しまくるんだけど、この人は悪役じゃなくても人を殺す役が多いから最初はあんまり悪役て感じがしないのが面白かったし、ヴィンセントという殺し屋のキャラクター造形自体もちょっと変わってるんだけど、それでも徐々に悪役だと思えるようになっていくのはさすがだなと。こんなトム・クルーズを見るという体験自体が新感覚だった。ジェイミー・フォックスも好きな俳優だし、病院のエレベーターのところでやっと気づいたけど刑事役でマーク・ラファロが出ているのも美味しい。映像としてもロスの夜景が美しく、音楽もいい。ストーリーも良質のサスペンスとして楽しめたし、私はかなり好きだなこの映画。何より列車アクション、というほどでもなかったけど列車でのシーンが素晴らしかったので予想以上に満足しちゃったな。タクシーでの二人のやり取りも良かったけど、私はやはり列車という空間がとても好きなんですよね。

この作品は主役二人のキャラクターがいいんだけど、特にヴィンセントは六年も殺し屋をやってきたというわりには雑だったりお節介だったりと変な男で、その変なところもいいしそれをトムが演じているというのも面白い。「何分で着く?」と毎回マックスに聞くのも好き。彼の最期も哀愁があってぐっと来た。リスクを回避するために雇い主にも顔を知られようとしなかったヴィンセントが、かつてマックスに話した「地下鉄で死んだのに誰にも気付かれなかった男」と同じようにひっそりと死ぬのが、孤高というよりは孤独だったヴィンセントという男を象徴しているようで刺さる。

印象的だったのはクラブでの銃撃戦。マックスとヴィンセント、それを追うFBI、一人で事件を追うファニング、マックスを怪しんで追うフィリックスの手下、とそれぞれが交差するのがたまらんな。終盤の高層ビルでのヴィンセントとアニーの追いかけっこも楽しい。マックスがアニーに電話して必死に逃げろと伝えるシーンはアニーがグズグズするからイライラしたけど、地上にいるマックスの視点から高層ビルの窓を切り取ることで堪能できるサスペンスが最高でした。