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『アバウト・タイム / 愛おしい時間について』感想

キービジュアルのレイチェル・マクアダムスの表情に惹かれて以前から気になっていてようやく見たけど、映画に限らず私が今まで触れてきたありとあらゆる物語の中で一番嫌いな作品になってしまった。一族に伝わるというタイムトラベル能力を持つティムの話なんだけど、能力の使い方がことごとく気に入らない。ちょっと失敗したらすぐノーリスクで過去に遡り、自分の都合のいいように動くまでトライアンドエラーを繰り返す。カジュアルな「つよくてニューゲーム」みたいなもので、自分勝手で見栄っ張りなティムの欲望のままにガンガン使うのがすんげえ不愉快。クッッッッソ野郎やんけ。「他人の人生を自分の意のままに操作している」という自覚がまったくないのも腹立たしい。ちなみにタイムトラベル要素に関しては因果関係が謎なところもあるけど、そこに注目するような作品ではないのであんまし気にならなかった。

メアリーはレイチェル・マクアダムスの魅力もあって可愛かったけど、それだけに彼女があんなクソ野郎との結婚に行き着くまで仕向けられたのかと思うとおぞましい。能力を使いまくってメアリーを射止めようとするところからすでに「なんだこいつ」と引き気味だったけど、恋人になってからもやり直してばっかで呆れる。嵐の中の結婚式はシチュエーションとして見るとすごく可愛かったけど、この二人を祝福しようとはとても思えなかった。

彼氏と喧嘩中のキットカットを助けようとするエピソードも不愉快。二人で過去に遡った結果、娘が息子に変わると即やり直すところは引いた。息子を殺したも同然だと思うんだけど、これを躊躇なくやれる無神経なティムが怖い。それ以前に妹のためにと動いたはずなのに、自分にとって都合の悪い結果になるとなかったことにしてしまえるのがすごい。その後、再び事故に遭ってそれでも妹は反省して立ちあがろうとしているのに、兄のほうは成長しないのが格好悪いな本当に。更にジェイとくっつけるよう仕向けるところとかお前ほんとそーゆーとこだぞ。そこは妹の自由にさせてやるべきなのに、余計なアドバイスをするあたりに特殊な力を持つ者の傲慢が滲み出ていて反吐が出る。病死した父親に何度も会いにいくのも冒涜的でドン引き。ところで父親に会いに行けるリミットは出産前ではなくセックスの前なのでは?

エンディングでもチートに頼ってメアリーを略奪して掴んだ幸せを散々満喫しておきながら「今を精一杯生きて素晴らしい日々をかみしめよう」という独白で終わるもんだから、思わず「はあ?」って声出た。脚本も兼任しているこの監督とは価値観が違いすぎる。ここまで最後までイライラさせられることはそうそうないだろうし(あっても困るが)貴重な体験をしたなとは、まあ。