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ネタバレ映画感想とかいろいろ

『ウォーリアー』感想

格闘技やボクシングに興味がないのでこれらを扱う映画は避けがちだったけど、トムハがこの映画の出演を機に始めたブラジリアン柔術で金メダルを獲得したというニュースを見たのと、同じ監督作の『ザ・コンサルタント』が面白かったので気まぐれに鑑賞。傑作だった。

ジョエル・エドガートントム・ハーディニック・ノルティの三人が演じた不器用な男たちによる親子喧嘩かつ兄弟喧嘩の物語で、こう書くとストーリーは単純なんだけどキャラクターと試合描写がいい。三者三様の苦しみと傷と孤独が格闘技を通して言葉少なに優しい許しへと到達する様が素晴らしく、後半は何度も涙が溢れた。特にトミーに罵られて再び酒に逃げてしまった父を見て、トミーが父を抱きしめるシーンが切ない。かつては酔って暴力を振るうばかりだった男は去り、目の前にいるのがただの孤独な年老いた父でしかなくなっていたことを初めて思い知ったから、トミーはやっと父を許せるようになる。ここは二人の説得力のある演技が良かった。

クライマックスの兄弟の試合はもちろん素晴らしかったけど、その前のマッドドッグの潔いほどの噛ませ犬っぷりも良かったし、ブレンダンとコーバ戦も泣けた。妻や校長や教え子、ジムの人々や海兵隊とそれぞれ二人を応援する人が増えていくのも熱い。ブレンダンとトミーの対照的な人生がそのまま表れたかのような戦い方も面白く、だからこそラストの万感の想いの詰まったトミーの優しいタップで涙腺が見事に決壊した。傷ついても戦いをやめられない寡黙な弟を絞めながら、謝罪と愛を懸命に伝える兄もいいし、それを優しい目で見つめる父の表情もいい。いい映画でした。