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『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』感想

私は二時間で濃密な物語を堪能できる映画という媒体が好きなので、映画の新作を見るためにドラマの視聴を要求される最近のMCUにはちょっと嫌気が差してたんだけど、『バキ翼』はドラマでしか描けない話だと思ったし、その上でたいへん面白かった。黒人がキャプテン・アメリカの盾を持つことの意味と、デシメーションの影響をここまで踏み込んで真摯に描いてくるとは思わなかった。なんつうか、『ブラックパンサー』を思い出す作品だったな敵も結末も含めて。今まで見てきたフェイズ4の物語の中ではこれが飛び抜けて素晴らしく、満足の一言でした。しかしやっぱりスティーブ・ロジャースってすごいというか異常な人だったのだなと改めて。

印象的だったのが正義の象徴だったキャプテンの盾がまるで呪いのようになっていたところで、それに振り回されるウォーカーがひどく痛々しかった。ワイアット・ラッセルの演技もいいんだよね。彼が最後には人を救おうとするところは熱い。同じく盾を盗んだために世界を憎むようになっていたシャロンも衝撃的だったけど、唐突にも感じたなこれは。詳細はまた今度描かれるんだろうけども。

そんな血清や盾を、遠く離れた場所から冷たく見つめるジモも良かった。大量の設定がもりもり出てきて驚いたし、食えない男だったけど彼の言動は一貫してるんですよね。おかげで『CW』を見返したくなった。

サムとバッキーは主役に恥じない活躍と描写で、特にサムのラストのGRCへのスピーチは言葉の一つ一つに思いがこもっていてダーッと泣けた。カーリの意志とイザイアの過去を受け止め、覚悟を決めた新しいキャプテン・アメリカがめちゃくちゃ格好良い。サムは初登場の時から安定感があったけど、より逞しくなった。ワカンダ製のスーツも、防御に特化しているのがサムらしくていい。シュリが作ったんだろうなやっぱり。

バッキーも『EG』を見た時は元の時代に帰れるチャンスを不意にしてるけどいいのかなとか考えてたけど、洗脳されていたとはいえ、人を殺してきたという重すぎる過去を抱えていることに気付いて愕然となった。そりゃ帰れんな……。でもナカジマのおじいちゃんと向き合い、ジモをワカンダに託し、サムと行動を共にすることで変わっていく流れが良かった。特にジモとの最後のやり取りや、サムと互いの関係について言及しながら最後は「ただの二人」に到達するところはすごく好き。ところでバッキーってまたずいぶんと可愛い字を書くんやな。笑った。