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ネタバレ映画感想とかいろいろ

『ルーム』感想

ルーム(字幕版)

「拉致られて狭い納屋に監禁され、その間に子供を産んだ女性」が主人公と聞いて『すべてがFになる』の真賀田四季を思い出し、いつか見ておきたいなと思っていた。しかし実際に見てみて圧倒されたのは、狭い納屋の世界しか知らない少年ジャックを演じたジェイコブ・トレンブレイの演技だった。映画はインパクトのある話なのにちょっと没入できないところもあったけど、ジャックの表情や演技のおかげで乗り切れたのでもう彼がMVP。

正直ピークは前半だったと思う。自分たちの状況を伝えようとするジョイと、その話を嫌がるジャックの激しいぶつかり合いから見入ってしまったし、その後の脱出劇もサスペンスフルで目が離せなかった。特にジャックが初めて空を見た時の表情がめちゃくちゃいいんだよね。

そして脱出成功後こそが本番で、描こうとしていることは私なりに察せたつもりだし、すごくいいドラマになるだろうなと期待もしたしなっているとも思う。元の納屋に帰りたいと事あるごとに口にするジャック、それでも世界に順応していく息子に対し、失われた七年間のギャップや他人の好奇の目と無責任な追及に苦しむ母親ジョイ、自分の娘を苦しめた男の血を受け継ぐ孫を正視できないじぃじ、血の繋がりがないからこそベストな距離でジャックと接するレオの優しさ、髪を切った時のジャックとばぁばの会話など、印象的なエピソードはいくつもある。しかしジャックやジョイを始めとして二人を取り巻く人々の苦悩を表面だけ描いているように見えて、なんというか真に迫って来ないんよね。描こうとしているテーマはいいと思うのに、描写に物足りなさが残るのがもどかしかった。でもいい映画だとは思う。